もくじ
はじめに:実務で役立つ個別支援計画とは
放課後等デイサービスや児童発達支援の現場では、個別支援計画の作成が日常業務のひとつです。しかし、形式的に記載しているだけでは、実際の支援に活かされず、評価や実地指導の際にもマイナス評価となってしまいます。この記事では、実際の記入例を交えながら、実務に活かせる個別支援計画の書き方を詳しく解説します。実地指導や加算取得にも耐えうる、伝わる計画書を目指しましょう。
個別支援計画の基本構成と記載項目一覧
個別支援計画には、以下のような項目が一般的に含まれます。
- 総合的な支援方針
- 長期目標・短期目標
- 本人支援、家族支援、移行支援などの支援内容
- 支援の担当者、頻度、時期
- モニタリングや評価の方法
これらの項目は、児発管がアセスメント結果に基づいて記載していきます。それぞれの項目には、具体性・根拠性・実行可能性が求められます。たとえば「人との関わりを増やす」といった漠然とした目標ではなく、「自由遊びの時間に3人以上の子どもと10分間遊ぶ」など、具体的で測定可能な記載を意識しましょう。
実地指導を意識した書類作成のコツ
計画書は、第三者(実地指導官や保護者)にとって「見て分かりやすい」ことが大切です。そのため、以下のような工夫を取り入れましょう。
- 数字を入れて行動や頻度を明確にする(例:「週2回」「5分間」など)
- 支援の根拠となるアセスメント内容と整合性を持たせる
- 専門用語を多用せず、誰が見ても理解しやすい文章にする
- 本人の強みを記載する(「できること」も明記)
- 達成時期や評価方法を明記する
特に実地指導では、「実際に支援が行われているか」「記載が具体的か」「保護者の同意があるか」がよく確認されます。
具体的な記入例で学ぶ!質の高い個別支援計画書のポイント
ここでは仮のケースとして「Aくん(6歳・年長児)」を例に、実際の記載を想定してみます。
総合的な支援方針
「安心できる人間関係の中で、本人が自分の思いや希望を伝えられる力を育てる。」
→【補足】子どもにとっての支援のゴールをイメージできるよう、抽象的な表現に具体性を持たせる
長期目標
「集団生活の中で、他児との関わりを楽しみながら、自分の思いを言葉で伝えることができるようにする。」
→【補足】1年後など中長期の姿を想定し、日常生活の中で成長を実感できる内容にする
短期目標
「自由遊びの時間に、3人以上の子どもと5分以上関わる場面を月2回以上持つ。」
→【補足】具体的な数字を入れて行動や頻度を明確にする
本人支援(領域:人間関係・社会性)
「SST(ソーシャルスキルトレーニング)で、簡単な自己紹介やあいさつの練習を行う。週1回、担当:○○職員。」
→【補足】支援方法・頻度・担当者を明記して、誰が見ても実行可能性がわかるようにする
家族支援
「家庭でも会話のキャッチボールが増えるよう、週1回のやりとりメモの提出をお願いする。」
→【補足】家庭での支援につなげる具体的な行動を提案し、保護者の協力が得られる内容にする
このように、各項目には支援内容の根拠となる行動観察、目的、頻度、担当者などを具体的に記載することが重要です。
5領域の支援内容と記載方法の実践例
2024年度から義務化された「5領域(健康・生活/運動・感覚/認知・行動/言語・コミュニケーション/人間関係・社会性)」に基づき、支援内容を整理・記載することが求められています。
たとえば、次のように記載すると第三者にも伝わりやすくなります。
- 健康・生活:「手洗い・うがい・排泄後の習慣を身につけるための支援(1日2回の確認)」
→【補足】日常的な生活行動は習慣化のために頻度を具体的に記載する - 運動・感覚:「マット遊びやリズム体操を通して身体の動かし方を学ぶ(週1回)」
→【補足】活動の種類と頻度をセットで明記し、継続性を意識する - 認知・行動:「ルールのある遊びを通して順番を待つ力を育てる(週2回)」
→【補足】行動変容を支援する際は、目的となるスキルを具体化する - 言語・コミュニケーション:「感情カードを使って自分の気持ちを言葉で伝える練習(週1回)」
→【補足】教材や支援方法を明記して、支援意図が伝わるようにする - 人間関係・社会性:「グループ遊びでのやりとりの練習、関わりの回数を記録(週2回)」
→【補足】成果測定のために観察・記録を取り入れる工夫が重要
計画書では、このようにどの領域に該当する支援なのかを明記し、偏りのない支援構成にしていくことが重要です。
よくあるNG表現と修正のヒント
以下は、よくあるNG例とその修正案です。
- 「人と関わる力をつける」→「自由遊びの中で2人以上の子と会話する場面を週1回設ける」
- 「生活習慣を身につける」→「朝の身支度(顔洗い・着替え)を職員の声かけなしで行えるようにする」
- 「自立に向けた支援を行う」→「登所から帰宅までの流れを視覚支援で示し、自分で準備・片付けができるようにする」
抽象的な表現を避け、行動ベースの具体的な記載を心がけましょう。
情報共有の精度を高めるには?連絡帳アプリの活用もポイント
個別支援計画は、現場内だけで完結するものではありません。日々の実践やモニタリングにおいて、保護者と継続的に情報をやり取りすることが、より質の高い支援につながります。
このとき役立つのが「保護者連絡帳アプリ」です。従来の紙の連絡帳と比べて、記録の共有・保存・振り返りがしやすく、写真やコメント付きで支援の成果をリアルタイムで伝えることができます。特にアセスメントやモニタリングでの家庭情報の取得において、アプリは有効な手段です。
以下のページでは、放課後等デイサービス・児童発達支援向けに使いやすい連絡帳アプリを比較しています。導入を検討している方はぜひご覧ください。
放課後等デイサービス・児童発達支援向け保護者連絡帳アプリの
おすすめ比較ランキング
まとめ:伝わる計画書は現場と家庭の橋渡し
個別支援計画は、子どもの育ちを支える「計画書」であると同時に、職員・保護者・関係機関をつなぐ「コミュニケーションツール」でもあります。実務の中で使われる計画にするためには、具体性・客観性・見やすさの3点を意識して作成することが大切です。実地指導にも対応できる質の高い書類を目指し、支援の現場をより良いものにしていきましょう。