個別支援計画の作成で必要な5領域とは?

edit投稿日:2025年5月3日 cached最終更新日:2025年5月3日

はじめに:なぜ「5領域」が重視されているのか

2024年度の報酬改定を機に、個別支援計画において「5領域」に基づいた記載が義務化されました。これは、子どもの発達をよりバランスよく、多面的に捉えることを目的としています。以前は「言語に課題があるから言語支援を」など、単一的な支援に偏ることもありましたが、5領域の導入により支援の幅が広がり、計画の質そのものが問われるようになっています。この記事では、各領域の解説と実務での記載ポイント、注意点を詳しく解説していきます。

5領域とは?発達支援における基本フレームを解説

個別支援計画で求められる「5領域」は、以下のとおりです。

  1. 健康・生活
  2. 運動・感覚
  3. 認知・行動
  4. 言語・コミュニケーション
  5. 人間関係・社会性

これらは、子どもの発達を包括的に把握するための視点です。それぞれの領域には発達段階や年齢に応じた課題・支援の方向性があります。複数の領域にまたがる支援もあるため、領域ごとに切り分けながらも、関連性を意識した記載が必要になります。

各領域の定義と支援内容の例

  • 健康・生活:基本的な生活習慣(睡眠、食事、清潔など)や安全に生活する力。例:「手洗い・うがいが習慣化できる」「排泄の自立を目指す」
    →【補足】日常的な行動を定着させるため、習慣・頻度の視点で支援内容を記載
  • 運動・感覚:粗大運動・微細運動、感覚統合の発達。例:「はさみを使って線の上を切る練習」「マット遊びで全身を動かす」
    →【補足】活動内容と目的をセットで示し、身体のどの機能にアプローチしているかを明確にする
  • 認知・行動:記憶・注意・予測・ルール理解などの力。例:「順番を守って行動できるようにする」「日課表を見て行動できるようになる」
    →【補足】支援のねらいが曖昧にならないよう、行動変容や課題解決の視点で記述
  • 言語・コミュニケーション:発音、語彙、表現、やりとりの力。例:「カードを使って感情を表現する」「自分の希望を言葉で伝える」
    →【補足】使用する教材や手段を明示し、表現手段の選択肢が広がる支援を意識する
  • 人間関係・社会性:他者との関わり、社会的ルールの理解と実践。例:「自由遊びで複数人と関わる」「他児の話を聞く姿勢を育てる」
    →【補足】観察や記録が可能な形にし、関係性の質や量を把握できる支援内容にする

なぜ5領域が重視されるのか?制度改定の背景

令和6年度の報酬改定では、療育の質のばらつきを減らす目的で、5領域の記載が義務化されました。これにより、計画書の質そのものが評価の対象となり、加算取得や実地指導にも直接関わる要素となっています。

背景には、計画が実態に即していないケースや、支援内容が偏っている事例が多かったことがあります。5領域を明記することで、支援全体を俯瞰しやすくなり、第三者にも根拠が伝わりやすくなります。

個別支援計画における5領域の活用方法

5領域を意識することで、計画全体の構造が整理され、支援目標や内容もより具体的に落とし込めるようになります。各支援内容がどの領域に対応しているかを明記し、領域のバランスを可視化することで、支援の偏りを防ぐことができます。

また、アセスメント段階でも5領域を意識した聞き取りや観察を行うと、後の計画作成がスムーズになります。たとえば「健康・生活」の領域では、起床・排泄・着替えといった日常動作の自立度を確認し、「人間関係・社会性」では、他児との関わりの頻度や質を見るなど、事前情報が深まります。

実際の計画書での記載例と表記ルール

実務では、支援内容の後ろに【対応領域:●●】と表記するケースが一般的です。例:

  • 「登所後の身支度を5分以内に行えるよう、視覚支援を活用して習慣化を図る(対応領域:健康・生活)」
  • 「自由遊びで他児と遊びのやりとりを3回以上持つ機会を設定する(対応領域:人間関係・社会性)」

また、1つの支援が複数の領域にまたがる場合もありますが、無理に1つに絞らず、主な目的に基づいて分類します。あわせて、記載内容が抽象的になりすぎないよう、回数・頻度・方法・観察指標などを明記しておくと、評価の際にも役立ちます。

支援プログラム公表義務と減算リスクへの対応

令和6年度改定では、個別支援計画とは別に「事業所としての支援プログラム」を5領域に対応して策定・公表することも義務づけられました。これは、利用者や保護者に対して支援内容の可視化を進めるための取り組みです。

未公表の場合は、減算(20単位)対象となるため、ホームページや事業所内掲示などを通じた公表が推奨されます。また、外部評価や実地指導の際に「どのように5領域を意識して支援しているか」が問われることも増えているため、現場での共有やスタッフ研修の実施も併せて検討しましょう。

実務で5領域を活かすためのチェックリスト

  • 支援内容ごとに対応する領域を明記している
  • 領域に偏りがないかを定期的に確認している
  • 記載が抽象的にならないよう頻度・方法・目的を明確にしている
  • 支援プログラムを5領域別に策定し、保護者にも公開している
  • スタッフ間で5領域を意識した支援の視点を共有している

情報共有の質を高めるには?連絡帳アプリの活用もポイント

個別支援計画で定めた5領域ごとの支援が実行されているか、保護者に伝わっているかも重要な観点です。そこで役立つのが「保護者連絡帳アプリ」の活用です。

アプリを活用することで、各領域ごとの支援記録や子どもの様子を、写真・コメント付きで保護者と共有できるようになります。支援の見える化が進むことで、保護者との信頼関係も構築しやすくなりますし、モニタリングや振り返りにも役立ちます。

以下のページでは、放課後等デイサービス・児童発達支援向けに使いやすい連絡帳アプリを比較しています。

放課後等デイサービス・児童発達支援向け保護者連絡帳アプリの
おすすめ比較ランキング

まとめ:5領域で広がる支援の質とバランス

「5領域」は、単なる制度対応項目ではなく、子どもの発達支援を体系的・戦略的に行うための大切な視点です。領域の視点を取り入れることで、支援内容が明確になり、支援チームや保護者との共有も円滑に行えるようになります。

制度改定をきっかけに、ただ「記載する」だけでなく、「活用する」「共有する」フェーズへと支援の質を高めていきましょう。