介護業界のトレンドと、今後の介護報酬改定の予測

edit投稿日:2021年6月27日 cached最終更新日:2023年9月30日

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日本の高齢化率は全人口の28.7%(2020年9月時点)と、世界で見てもかなり高い数値になっています。介護保険制度が始まって以来、介護事業所数も増加してきており、時代背景に伴って、サービス内容も変容してきています。

3年に一度の介護報酬改定にも見られるように、介護事業は社会情勢と照らし合わせて常に適正化していくことが重要で、国の介護に対する強化ポイントを理解することは介護事業所の収益を上げるきっかけにもなります。

ここでは、日本の要介護者数・介護事業所数の推移や、過去の介護報酬の流れについてご紹介します。

こんな人にオススメ
  • 日本の介護状況に関する問題点について簡単に知りたい方
  • 介護報酬の変化と現在の介護報酬の強化ポイントを理解したい方
  • 現在までの介護事情と社会情勢に合わせた今後の介護事情の変化について知りたい方

要介護者の推移

そもそも要介護者とは、【要介護認定を受けた人】のことを指します。では、要介護度の認定はどのようにされるのでしょうか。

要介護認定の基準

介護や日常生活の支援が必要な人で介護保険料を支払っている人は、要介護認定を申請することができます。要介護認定を申請すると、以下の手順で審査がおこなわれます。

要介護認定審査後、利用者の介護状況に合わせて【要支援】【要介護】の2つに分かれます。さらにそこから、要支援であれば1〜2、要介護であれば1〜5に分かれます。

大分類 小分類 状態
要支援 要支援1〜2 部分的に介助が必要
要介護 要介護1〜5 日常生活動作だけでなく、認知機能の低下も見られる。

要支援状態:「介護予防サービス」を利用でき、要介護状態になるのを防ぐこと、現状よりも介護状態が悪化しないようにすることが目的

要介護状態:「介護サービス」を利用でき、日常生活に必要な介護を受けることが目的

現在の要介護者数とその推移

2021年現在、日本の要介護者数は679万人(令和3年1月時点)となっています。

平成12年の介護保険制度が開始した当時の要介護者数と比較すると、約3.1倍と年々増加の一途をたどっています。それに伴い日本の高齢化率は過去最高の28.7%となり、毎年更新し続け、今後も要介護認定者数は2040年まで増え続ける予想です。

高齢化率が高まる背景には、敗戦直後の第一次ベビーブーム(1947年〜1949年)、第二次ベビーブーム(1971年〜1974年)のいわゆる【団塊の世代】の高齢化と、近年の晩婚化・未婚化・少子化・生産年齢人口の減少が同時に起こっており、高齢化問題を更に複雑なものにしています。

【問題①】高齢化率の増加

この社会背景を捉えて要介護者数の推移を見ると、第一次ベビーブームに出生した人が前期高齢者になるのは2015年で、2025年には後期高齢者になります。

2015年問題 2025年問題 2045年問題
団塊の世代(1947年~1949年の出生者)が前期高齢者 団塊の世代が後期高齢者 全国の高齢化率が30%を超える
Tips

厚生労働省は地域包括ケア「見える化」システムという都道府県・市町村における介護を支援するための情報システムを導入しています。自治体向けに開示されている情報よりも情報は減りますが、個人でもログインして地域の介護情報を閲覧することができます。

各介護事業所で地域性に応じた介護に関する問題や計画を立てる一助になるでしょう。

https://mieruka.mhlw.go.jp/

【問題②】核家族の増加

現在の日本での要介護者の世帯構造は、単身世帯、核家族世帯、高齢者世帯がほとんどを占めており、三世代世帯は年々減少してきています。

家庭内で介護の人手が減ることで、介護サービスを利用せざるを得ない要介護者は年々増加しています。単身もしくは高齢者世帯は周りのサポートも受けづらく、介護事業所が寄り添うことがとても大事になってきます。

要介護者が増加してくると、それだけ介護サービスの多様化が求められてきます。各介護事業所がそれぞれの強みを活かして、要介護者に喜ばれるサービスを提供することで利用者の満足度が向上し、最終的には事業所の収益増加にもつながってきます。

過去の流れから、今後の介護の方向性を考える

要介護区分のすべてにおいて認定者数は増加していますが、その中でも近年とくに要支援者の数が約4倍近くまで増加しています。これには国の介護に対する方針が大きく影響しています。

要支援者が増加していることは、要介護状態になる人を未然に防ぐ対策を早くから講じるということです。令和3年度の介護報酬改定では「3.自立支援・重度化防止の取り組み推進」が柱の一つとして組み込まれています。

今後は、要支援者向けのリハビリ関連のサービス需要が増してくると思われます。

LIFE加算にも対応した介護ソフト
3年に一度の報酬改定。介護ソフトによっては「対応する」「すぐには対応されない」「アップデートには追加料金がかかる」などさまざまです。

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介護事業所数の推移

ここまでで、要介護者数が増加してきているのは分かりましたが、介護事業所数はどのような変化をしているのでしょうか。

介護事業所数は介護保険制度が始まって以降、年々増加の一途をたどっています。その中でも近年とくに注目されるのは【訪問看護ステーション】の増加です。逆に、訪問介護や居宅介護支援事業所数は、横ばいもしくは低下してきています。

各サービス種別での変化を、個別に見てみましょう。

訪問看護ステーションの事業所数の推移

現在の訪問看護ステーションの数は11,580件となっており、直近5年間で1.6倍まで増加しています。それに伴い、1事業所当たりの延べ利用者数は大幅に増加しており、ニーズは増えています。

要介護者の増加に伴い、要介護度の高い人が増えてくると、在宅での点滴や経管栄養、服薬管理や緊急時対応など、医療行為が必要な対象者も増えてきています。介護領域での健康状態の確認において、看護師の必要性は今後さらに高まるでしょう。

訪問介護の事業所数の推移

介護保険制度が始まってから訪問看護の事業所数は年々増加し、平成30年は35,111件でしたが、令和元年は34,825件と減少しました。近年は倒産する訪問介護事業所も増えてきており、令和元年度の訪問介護事業所の倒産は118件と過去最多を更新しています。

訪問介護の利用者数は増えているのに、なぜ倒産する訪問介護事業所が増えているのでしょうか。その理由は、介護スタッフの確保が難しいこと・離職が多いことがほとんどです。

さらに2020年〜2021年にかけてはコロナウイルス感染拡大によって、事業の継続が難しくなる事業所も増えることが懸念され、倒産する事業所も増える可能性があります。

居宅介護支援の事業所数の推移

訪問介護と同様に、近年事業所が減っているサービスとして、居宅介護支援があります。平成30年と令和元年を比較すると、696件の減少です。

この原因として、2015年の介護報酬改定でのケアマネの実務研修受講試験の見直しが大きな起点になったことがあげられます。2015年の介護報酬改定では、ケアマネの資質向上が重要なテーマとなっており、ケアマネの試験を受験する要件が見直され、資格取得の難易度が向上しました。このことがケアマネの有資格者の減少を招き、事業所において人材確保が難しくなり、結果的に事業所数が減少する要因になったとされています。

通所介護の事業所数の推移

通所介護の事業所は、現在まで増加し続けています。近年は介護報酬改定にて介護予防に力を入れているため、通所介護の必要性は更に高まってきています。

介護保険制度が始まった当時、デイサービスの総費用は3,784億円でしたが、平成30年では1兆6,457億円まで増加しています。通所介護事業所におけるサービス展開は今後も伸びていく領域ですが、実は倒産件数も訪問介護に次いで多い領域になります。特に、小さな事業所では赤字経営となることも多く、資金力の乏しい小規模事業所が淘汰されてきています。

現在、全サービスの総計では介護事業所数は増加しているも、利用者需要にサービス提供者の供給が追いつかず、介護事業所の経営が難しくなるケースも多いようです。経営において簡略化できる部分はICT化を進めるなどして、経営を効率化していくことが今後必要となります。

介護報酬(介護給付費)の推移

介護給付費は年々増えてきており、平成30年では11.1兆円と、介護保険制度が始まった当初と比べて3倍以上になっています。

介護報酬は3年に1度改定され、その時代ごとの介護ニーズに合わせて介護計画が立てられます。

以下が2009年〜2021年の介護報酬改定の重点強化項目です。

2009年度
  • 介護従事者の人材確保・処遇加算
  • 医療との連携や認知症ケアの充実
  • 効率的なサービスの提供や新たなサービスの検証
2012年度
  • 在宅サービスの充実と施設の重点化
  • 自立支援型サービスの強化と重点化
  • 医療と介護の連携・機能分担
  • 介護人材の確保とサービスの質の評価
2015年度
  • 中重度の要介護者や認知症高齢者への対応と更なる強化
  • 介護人材確保対策の推進
  • サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築
2018年度
  • 地域包括ケアシステムの推進
  • 自立支援、重度化防止に資する質の高い介護サービスの実現
  • 多様な人材の確保と生産性の向上
  • 介護サービスの適正化、重点化を通した制度の安定性、持続可能性の確保
2021年度
  • 感染症や災害への対応力強化
  • 地域包括ケアシステムの推進
  • 自立支援・重度化防止の取組の推進
  • 介護人材の確保、介護現場の革新
  • 制度の安定性、持続可能性の確保

2009年・2012年の介護報酬改定では、【介護人材の確保】と【医療との連携】を軸としてきましたが、団塊の世代が前期高齢者になるのを受けて、2015年の改定からは【介護予防】にも力を入れ始めました。

2018年になると【介護予防は更に強化】され、介護事業所だけでなく市区町村との連携を軸とした【地域包括ケアシステムの導入】を始めました。

そして2021年度の介護報酬改定では、【介護人材の確保】【介護予防の拡充】に加え、コロナウイルス感染症や大雨被害など災害の影響を受けた事業所が【事業を存続していくための対策】をするように呼びかけられました。また、科学的介護の推進として【CHASEやVISITの活用(LIFE)】の推進など、介護評価の部分の人件費を抑えつつサービスの質を高める取り組みが行われています。

次の報酬改定の内容を予測する

2025年以降、第一次・第二次ベビーブームの出生者が高齢者となり、高齢者人口は増加の一途をたどります。ますます介護需要は増えてきますが、介護サービス提供者の確保や処遇改善はまだまだ進んでいないのが現状です。

今後は、科学的介護(介護現場のICT化やビッグデータを活用した介護サービスの評価)や、クラウドシステムの活用にて事業所の運営面をできるだけ効率化し、介護従事者に不要な負担を減らしつつ良質なサービスを提供しなければ、事業所の収益も維持することができません。

生活の多様化が進むなか、高齢者の増加によって介護のニーズも多様化し、介護保険サービスではカバーしきれないようなニーズが多く出てくると思われます。各事業所は、保険外サービスを提供するなどして独自の強みを活かした事業所運営をしていかなければ、集客に苦戦する可能性があります。

社会情勢と要介護者・要支援者の動向、国・各自治体での取り組みなど、広い視点で介護と向き合うことが、今の介護事業所経営者には求められています。

まとめ

ここまで、過去から現在の要介護者・介護事業所・介護報酬改定の動向について解説してきました。最後にポイントをまとめましたので、振り返りの際にご活用ください。

筆者
  • ポイント①:要介護者数は増加し、介護ニーズは更に高まっている
  • ポイント②:過去から現在までの流れを知り、今後の介護報酬改定の方向性を予測する
  • ポイント③:介護ニーズの多様化によって、保険外サービスなどを展開して独自の強みを活かした介護事業所の経営が求められている
LIFE加算にも対応した介護ソフト
3年に一度の報酬改定。介護ソフトによっては「対応する」「すぐには対応されない」「アップデートには追加料金がかかる」などさまざまです。

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