訪問介護の指定基準と実地指導について分かりやすく解説

edit投稿日:2021年7月17日 cached最終更新日:2023年9月26日

訪問介護の事業所数は居宅サービス事業所の中で最も多く、厚労省の調査によれば令和元年(2019年)時点で34,825事業所が存在します。数が多い要因としては、管理者に資格が不要であったり、小規模で始められるなどの開業ハードルの低さが挙げられます。

とはいえ、訪問介護事業所の開設にはさまざまな要件があり、基準をクリアしていなければ運営することができません。ここでは訪問介護の指定基準について分かりやすくご紹介します。

こんな人にオススメ
  • 訪問介護事業に興味のある、訪問介護事業所の開業を検討している
  • 訪問介護の指定基準について分かりやすく知りたい
  • 訪問介護の実地指導の具体例などについて知りたい

訪問介護の指定基準とは?

訪問介護事業所の運営には、介護保険法が定める基準にもとづいて指定を受ける必要があります。申請先は地域によって、都道府県・指定都市・中核市・区市町村などさまざまです。そして指定を受けるには、以下の基準を満たす必要があります。

  • 法人であること
  • 人員基準を満たしていること
  • 設備基準を満たしていること
  • 運営基準を満たしていること

「人員配置基準」「設備基準」「運営基準」ついて、詳しく見ていきましょう。

訪問介護の人員配置基準

  • 訪問介護員等の員数は常勤換算方法で2.5人以上必要(サービス提供責任者を含む)
  • 管理者(管理の職務に従事する者)が常勤で1名必要

資格要件

訪問介護員とサービス提供責任者の資格要件は以下の通りです。

訪問介護員
  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 介護職員初任者研修課程修了者等
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 訪問介護員養成研修課程修了者(旧1級・旧2級課程)
  • 看護職員(看護師、准看護師、保健師)
  • 生活援助従事者研修修了者

(生活支援中心型サービスにのみ従事可能)

サービス提供責任者
  • 介護福祉士
  • 実務者研修修了者
  • 介護職員基礎研修課程修了者
  • 旧1級課程修了者
  • 看護職員(看護師、准看護師、保健師)

配置要件

訪問介護員
  • 常勤換算方法で2.5名以上確保する必要があります。(サービス提供責任者の員数を含む)
サービス提供責任者
  • 1名以上を超える員数を配置しなければならない事業所についてはそのうちの一定の員数につき常勤換算により非常勤職員をもって充てることができます。
  • 非常勤職員の場合、常勤の訪問介護員等が勤務すべき時間数の2分の1以上に満たしていれば問題ありません。
  • 常勤専従で事業所の利用者数が40またはその端数を増すごとに1名以上を配置することが必要となります。

サービス提供責任者は利用者が増すごとに配置基準が異なります。

常勤換算方法
  • 利用者数÷40(少数第1位に切り上げ)以上を配置しなければなりません。
利用者数 必要人数
40名以下 常勤1名
40名超80名以下 常勤2名
80名超120名以下 常勤3名
120名超160名以下 常勤4名
160名超200名以下 常勤5名
201名超240名以下 常勤6名
管理者
  • 特に資格は不要です。
  • サービス提供責任者と兼務可能です。
  • 原則、常勤であり、当該事業所の管理業務に従事する必要があります。

訪問介護の設備基準

訪問介護の設備基準には、事務室の設置と備品に関する2つがあります。

事務室
  • 間仕切りする等、他の事業用に供するものと明確に区分されている場合は他の事業と同一の事務室であっても差し支えない。
  • 区画がされていなくても業務に支障がないときは、指定訪問介護の事業を行うための区分が明確に特定されていれば足りる。
  • 利用申し込みの受付、相談等に対応するのに適切なスペースを確保する。
備品等
  • 感染症予防に必要な設備等に配慮する。
  • 他の事業所、施設等の同一敷地内にある場合で他の事業所、施設等の運営に支障がない場合は、当該保他の事業所、設備等に備え付けられた設備および備品等を使用することができる。

訪問介護の運営基準

運営基準には、事業所の運営規程に記載しなければならない内容があります。

以下の項目に留意して事業所ごとで運営規定を設定していく必要があります。

  • 内容および手続の説明および同意
  • 提供拒否の禁止
  • サービス提供困難時の対応
  • 受給資格等の確認
  • 要介護認定の申請に係る援助
  • 心身の状況等の把握
  • 居宅介護支援事業者等との連携
  • 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
  • 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供
  • 身分を証する書類の携行
  • サービスの提供記録
  • 利用料等の受領
  • 保険給付の請求のための証明書の交付
  • 指定訪問介護の基本取扱方針
  • 訪問介護計画の作成
  • 同居家族に対するサービス提供の禁止
  • 利用者に関する市町村への通知
  • 緊急時等の対応
  • 管理者およびサービス提供者の責務
  • 運営規定
  • 勤務体制の確保等
  • 秘密保持等

訪問介護の指定基準に伴う運営規定は上記と通り、かなり細かく決まっています。各自治体のひな形に沿って作成することをおすすめします。

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訪問介護の実地指導について

実地指導は各事業所における利用者の生活実態、サービス提供状況、報酬基準の適合状況等を直接確認しながら事業者の気づきを促すなど、より良いケアの実現や介護給付の適正化のために行われています。訪問介護の実地指導は、前述した「人員基準」「設備基準」「運営基準」が守られているかという観点で指導が入ります。

実地指導の対象となった介護保険事業所は、指導の実施予定日10日前までにチェックリストの提出が必要です。

令和元年度の実地指導、指定申請書での具体的な指摘内容(※訪問介護の事例を抜粋)

訪問介護員等の員数
  • 常勤換算方法で2.5人を下回っていた。
  • 訪問介護以外の業務時間を含めて算定していた。
身分を証する書類の携行
  • 訪問介護員に身分を証する書類を携行させること。
サービス提供の記録
  • 計画に位置付けたサービス提供時間と異なる時間でサービスを提供していた。(変更となった理由等を具体的に記載する必要あり)
  • 計画に位置付けたサービスとは異なるサービス提供している事例が認められた。(変更となった理由等を具体的に記載するとともに、必要に応じて居宅サービス計画書等の変更援助を行うこと。)
訪問介護計画の作成
  • 区分変更申請の結果が出るまでの間、訪問介護計画を作成していない。(区分変更申請時は、暫定プランを作成し、区分変更の結果の内容により、本プランにするか再作成するかを判断すること。)
訪問介護費
  • サービス提供の実績が書類上で確認できないにも関わらず、訪問介護費を算定していた。
  • 記録上のサービス提供内容と実際に請求した訪問介護費の区分に相違があった。
  • 前回提供した訪問介護から概ね2時間未満の間隔で訪問介護を行っているにも関わらず、それぞれの所要時間を合算していない。
  • 居宅サービス計画に位置付けられていないサービスを訪問介護として提供している。
  • 根拠の不明確な深夜のサービスが毎日行われている。(必要性や理由を明確にし、根拠を記録しておくとともに、不必要なサービスは行わないこと。)

まとめ

これまで、訪問介護の指定基準について解説してきました。最後にポイントをまとめましたので、振り返りの際にご活用ください。

筆者

ポイント①:訪問介護の指定基準は「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3つの要件がある
ポイント②:「人員基準」は管理者、訪問介護員、サービス提供責任者が必要で、最低必要人員も決まっている
ポイント③:実地指導で指摘されないためにも、日々の訪問介護記録を正確に残しておく必要がある

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