放課後等デイサービスを開業するためには、自治体から「指定障害児通所支援事業者」として指定を受ける必要があります。そのためには、多数の書類を揃え、厳格な審査と現地調査をクリアしなければなりません。この記事では、申請に必要な行政手続きと提出書類を時系列に沿ってわかりやすく解説します。
もくじ
開業スケジュールにおける手続きの位置づけ
放課後等デイサービスの開業は、「開業希望月の1日付け」で指定を受けるのが原則です。そのため、自治体への申請は開業希望月の2〜3ヶ月前には提出しなければなりませんが、そこに至るまでに多くの準備期間が必要となります。
例えば、東京都や大阪市など大都市圏では、指定申請の受付期間が明確に設定されており、受付期間を逃すと次の機会まで半年以上待たなければならないこともあります。加えて、近年では新規事業所の乱立を防ぐために、自治体側が申請に対して慎重な姿勢を取っており、事前協議・面談・書類提出の順番や内容に細かい制限が設けられていることが増えています。
そのため、開業を目指すのであれば、最低でも6ヶ月前からスケジュールを逆算して、いつまでに何を終えるべきかを明確にした上で動くことが求められます。物件の契約や人員の確保、事業計画の策定などもこの時期から着手しなければ、申請期限に間に合わなくなる可能性が高まります。
また、行政手続きは一度で完了するものではありません。担当者との面談を複数回行い、ドラフト段階の書類を見てもらいながら修正を重ねてようやく申請が受理される流れが一般的です。手戻りを防ぐためにも、自治体のホームページに記載されている「新規開設ガイドライン」や「指定申請の手引き」は必ず確認し、最新の要件を理解しておくことが大切です。
放課後等デイサービスの指定申請の主な流れ
指定申請は、単なる書類提出ではなく、事業所としての総合的な準備状況を確認するプロセスです。自治体によって細かなフローは異なりますが、一般的には以下のステップで進みます。
- 自治体の障害福祉課への事前相談(開業6ヶ月前〜)
- 物件の確保(基準を満たす広さ・設備が必要)
- 人員体制の構築(必要な有資格者の採用)
- 指定申請書類の準備と作成(約40〜60点の書類)
- 申請書の提出(2〜3ヶ月前)
- 書類審査とヒアリング(修正の指示が入る場合あり)
- 実地指導(開業1ヶ月前〜)
- 指定通知書の交付(開業月の1日付で有効)
この中で特に時間がかかるのが、書類の準備と職員の確保です。たとえば児童発達支援管理責任者(児発管)は全国的に人材不足で、採用までに数ヶ月かかることも珍しくありません。また、各職員の資格証の写しや雇用契約書、実務経験証明書なども、書類不備や記載ミスがあると再提出を求められるため、1つ1つを丁寧に確認する必要があります。
書類作成はエクセル・ワード・PDFなど形式が混在しており、自治体ごとに様式が異なるため、整理にも労力がかかります。多くの事業者は、行政書士や専門の開業支援サービスと連携して、このプロセスを乗り越えています。
指定申請で提出が求められる主な書類一覧
指定申請時に必要な書類は40〜60点にも及びます。これらは法人情報、物件情報、職員情報、運営体制、利用者対応、財務関係といったカテゴリに分かれています。
法人関係の書類
法人として事業を行うため、法人設立の正当性や目的を確認する書類が求められます。
- 登記事項証明書(3ヶ月以内)
- 定款の写し(目的欄に「障害児通所支援事業」が明記されていること)
- 印鑑証明書
事業所関係の書類
事業所が基準を満たしているかどうかを確認するための資料です。
- 賃貸借契約書の写し(名義・契約期間・使用目的に注意)
- 施設の平面図(寸法付き)
- 消防設備の図面・確認済証
- 室内外の写真(各部屋、出入口、避難経路など)
職員関係の書類
職員が配置基準・資格要件を満たしていることを証明する書類です。
- 職員一覧表(常勤・非常勤の区分、担当職種など)
- 雇用契約書の写し
- 各種資格証の写し(保育士証、教員免許、児発管研修修了証など)
- 実務経験証明書(児発管に必要)
- 勤務表・シフト予定表
運営・支援体制に関する書類
施設運営の方針や利用者支援のルールが明確に整備されているかを示す書類です。
- 運営規程(開所日・時間・利用定員・サービス内容など)
- 苦情解決体制・衛生管理体制・緊急時対応マニュアル
- 個人情報保護方針
- 支援提供の体制図
利用者関連の書類
実際に利用者を受け入れる際に必要な様式の雛形です。
- 利用契約書・重要事項説明書
- アセスメントシート・個別支援計画書のフォーマット
- 利用申込書・面談記録シート
財務関連の書類
収益の見通しや財務の健全性を確認するための資料です。
- 事業計画書(定員・利用者数・提供時間を反映)
- 収支予算書(初年度の月次計画)
- 債務の有無に関する誓約書
- 給与体系や報酬の見込み
これらの書類は、内容に一貫性があるかどうかも審査されます。たとえば、平面図に記載されている部屋名が運営規程と一致していない、職員一覧の役職名と雇用契約書の職務内容が食い違っているなど、細かい点で差し戻しとなるケースも少なくありません。
放課後等デイサービスの実地指導(現地調査)で見られるポイント
書類審査を通過すると、次は自治体職員による現地調査(実地指導)が行われます。これは「書類に記載された内容が本当に現場で反映されているか」を確認する工程であり、非常に厳密なチェックが入ります。
チェックされる主な項目は以下の通りです:
- 活動スペースの広さが基準(1人当たり1.98㎡)を満たしているか
- トイレや洗面台が複数人で使用できる構造になっているか
- 静養室、職員休憩室が適切に配置されているか
- 消火器、避難誘導灯、防火扉など安全設備が完備されているか
- 非常口や出入口に障害物がなく、車椅子での通行が可能か
- 掲示物(職員体制図、苦情窓口、避難経路図など)が整っているか
また、職員がその日に勤務しているかどうかも確認され、シフト表や出勤簿との照合が行われます。研修修了証や資格証の原本提示を求められる場合もあるため、事前にスタッフに周知しておくことが大切です。
一部でも基準を満たしていない場合、改善指示が出され、再調査や再提出が必要になります。調査当日は、代表者や管理者が立ち会い、説明できる体制を整えておきましょう。
放課後等デイサービスの開業でよくあるミス・注意点
放課後等デイサービスの開業準備では、多くの事業者が共通して以下のようなミスをしています:
- 雇用契約書に「職種名」が明記されていない(例:児童指導員と記載すべきところが「スタッフ」のみ)
- 賃貸借契約書の「使用目的」が「住居」や「事務所」となっており、事業用として適切でない
- 建築基準法や消防法の確認を怠り、後から大規模改修が必要になる
- 資格証の有効期限切れに気付かず、再取得が必要になった
これらのトラブルを避けるためには、事前に行政への相談やドラフト書類の確認を重ねることが重要です。自治体によっては申請前の「事前審査」を受け付けており、そこで内容の修正指導を受けられる場合もあります。
プロによるサポートで申請の精度を上げる
初めての開業では、申請書類の内容や順序、職員配置の整合性など、多くの不安やミスが生じがちです。そのため、最近では開業支援専門のサービスや、障害福祉に特化した行政書士との連携が一般化しています。
「プロジェクトRIN」は、放課後等デイサービスの開業支援に強みを持つ障害福祉業界向けソフトで、指定申請に必要な書類テンプレートや、記入済みのサンプル書類、職員資格のチェックリストなどを提供しています。さらに、自治体ごとの要件の違いにも対応し、申請から開業後の請求業務まで一貫してサポート可能です。
実際に利用した事業者の中には、「書類提出がスムーズに通過し、現地調査も1回で完了した」「自治体とのやり取りが不安だったが、同席してもらえて心強かった」といった声が多く寄せられています。
まとめ:段取りと正確性が成功のカギ
放課後等デイサービスの開業では、単にやる気や思いがあっても、制度や手続きの正確な理解がなければ前に進むことはできません。行政手続きは複雑で、書類のミス1つで数ヶ月の遅延につながる世界です。
そのため、早めの行動、丁寧な準備、そして信頼できるパートナーの存在が何より重要になります。まずは自治体のホームページをチェックし、申請スケジュールと必要要件を確認するところから一歩を踏み出しましょう。